フィリピン、マニラ(2020年12月10日)-アジア開発銀行(ADB)が本日発表した報告書によると、アジアの開発途上国における2020年の経済活動はマイナス0.4%の成長にとどまるものの、同地域が新型コロナウイルスパンデミックの影響から回復に向かうことで、2021年は6.8%まで上向くと予測される。

アジア経済見通し2020年改訂版(Asian Development Outlook 2020: ADO 2020 Update)」の定期的な補足で示された新たな成長見通しでは、今年の国内総生産(GDP)の成長予測について、9月時点のマイナス0.7%から上方修正され、2021年の予測には変更がなかった。しかし、地域によって見通しは異なり、東アジアは今年中に成長へと向かう一方で、その他の地域はマイナス成長にとどまる。

澤田康幸ADBチーフエコノミストは、「アジアの開発途上国の見通しには、改善が見られる。この地域の二大経済大国である中国とインドでは、成長予測は上向いている」とした上で、「長引くパンデミックは、依然として大きなリスクではあるが、ワクチン開発に関する最近の進展によって落ち着きを見せつつある。開発途上国経済にとって、安全かつ効果的で、時宜を得たワクチン供給は、アジア地域の経済再開と成長回復を支える上で極めて重要である」と述べた。

パンデミックによるロックダウンと制限は、この地域においてさまざまなレベルで緩和されつつあり、製品輸出は、第2四半期の大幅な落ち込みから急速に回復している。また、東アジアおよび太平洋地域では、ここ数カ月間で、新型コロナウイルスの感染はかなり抑えられており、人の移動が新型コロナウイルス以前のレベルに戻りつつある。ただし、旅行産業の回復は遅れる可能性が高い。

アジア各地域の多くの開発途上国では、今年はマイナス成長になると予想される。東アジア地域は例外で、中国と台湾が予想より早く回復に転じたことを背景に、2020年の成長率は1.6%のプラス成長が見込まれている。東アジア地域の2021年の成長予測は、7.0%のままである。

南アジア地域の2020年のGDP成長率は、マイナス6.1%と予測されており、マイナス6.8%とした9月の見通しから上方修正された。南アジア地域の2021年の成長率は、7.2%への回復が見込まれている。同地域最大の経済国であるインドの成長見通しについては、2020年度は9月時点のマイナス9.0%からマイナス8.0%に上向き、2021年度は、引き続き8.0%の成長見通しとなっている。

東南アジア地域の経済成長は、特にインドネシアとマレーシア、そしてフィリピンにおいて新型コロナウイルスの感染とそれに対応するための封じ込め対策が継続しており、依然として切迫した状況下にある。同地域の2020年の成長予測は、9月時点のマイナス3.8%からマイナス4.4%に下方修正された。2021年の予測も引き下げられ、東南アジア地域の来年の成長見通しは、9月時点の5.5%に対して現在は5.2%と予測されている。

太平洋地域の予測は、2020年がマイナス6.1%、2021年が1.3%とそれぞれ変わりはない。中央アジア地域の2020年の成長率は、引き続きマイナス2.1%であるが、2021年の予測は、9月時点の3.9%から3.8%へとわずかに下方修正されている。

アジア地域のインフレ率は、需要の低迷と石油価格の低下により、2.9%とした9月時点の見通しからわずかに下方修正され、2020年は2.8%と予測される。2021年のインフレ率は、9月時点の2.3%の予測から1.9%に低下する見込みである。2020年の石油価格は、1バレル当たり42.50ドルを維持するが、2021年には、1バレル当たり50.00ドルに上昇することが予想される。

ADBの年次の主要経済報告書であるADOは、毎年4月に発表され、その改訂版が9月に、簡易な補足版が通常7月と12月に発表されている。アジアの開発途上国とは、46のADB開発途上加盟国・地域を指す。

ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。

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